皆さん、こんにちは。
発達心理サポートセンターの心理士/カウンセラーの車重徳です。
さて、こんな質問を頂きました。
「なぜ、WISC4検査の研修をするようになったんですか?」
というものです。
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元々は、僕も心理士としてWISCの検査しかやっていなかったです。
ただ、実はあんまり明るい感じで話す内容でもないのですが、とある事件があったんです。
ネットで調べればわかるかと思いますが、千葉県でとある事件がありました。
どういうことかというと、とある幼稚園がありまして、年長さんでとても活発な男の子がいました。A君とします。そのA君は中々やはり先生の言う事を聞かないです。
だから、皆が先生の前に集まってお話聞いていてもずっと動いているし、先生が読み聞かせする絵本の周りにみんなが集まって座ってても、その子は一人だけ違うことをやっていたり、砂場でみんな入らないように独り占めしようとしたり誰かが、おもちゃで遊んでいたらそれを勝手に奪ったりとか、っていう活発な男の子でした。
もう卒園間近のタイミングで、やはり担任の先生はその子のことが心配になりました。ちょっと気に入らないことがあると友達突き飛ばしちゃったりということもあったので、担任の先生はお母さんを呼び出して言いました。
「もう卒園間近です。幼稚園であれば楽しくやっていたし、色々な面で大目に見ていましたが、小学校には入ってもし突き飛ばしちゃったりしたら…階段で突飛ばしたりしたら大ケガにもつながるし心配です。」というような話をお母さんに伝えました。
おそらく、言葉すごく選んでいったんじゃないかなと思います。
しかし、お母さんに最終的に入った言葉は“発達障害”という言葉だったんです。
“うちの子は発達障がいかもしれない”という認識が深く入ってしまいました。
言い方って難しいですよね。
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今から10年、20年近くの話なんです。お母さんは「うちの子は発達障害と言われた」
、発達障害だ、直さなくちゃとなりました。
しつけがすごく厳しくなったんです。
例えば、ごはん食べているときに遊んだら激怒して怒るし、物を出して片づけないとめちゃめちゃ怒るし、でも、中々直らないです。定着しないです。
多分、聴覚記憶が低いのかなと思います。
お母さんが何度も起こっても怒ってもA君の行動は直りません。
お母さんはその度にイライラしていきます。うちの子は発達障害かもしれない、発達障害だったら小学校通えないかもしれない、通わせてもらえないかもしれない、小学校もいけないわが子ってどうなんだろうっていう、辛い、マイナスなイメージがどんどん伝わっちゃったと思います。
そんなお母さんのしつけはどんどん厳しくなり、とうとう手が出るようになってしまいました。「お母さんの言う事なんで聞けないの!」って繰り返し手が出る。
子供はぎゃんぎゃん泣くんですが、定着しないものは定着しないです。
最終的にどうなったかというと、たしか卒園の3日前とかに、何度お母さんが厳しく厳しく注意しても、手を出しても、お母さんが叩いても叩いてもA君の行動は変わらなかったんです。
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お母さんも疲れちゃったんでしょうね。
もう行きつくところまで行っちゃって、A君の行動が全く変わらないので、お母さんは確か果物ナイフだったかと思います。
果物ナイフ取り出して、A君に向けて「お母さんの言う事聞かなかったら、刺すよ」って言っちゃったんです。
その時に、幼稚園生ながらにA君はこれはまずいと思って、そのあと変えたのですが、ただ、やっぱり長続きはしない。
なので、こういったショッキングなことがあったにも関わらず、行動が変わらなかった。
お母さんは疲れてしまいました。
「うちの子は発達障害だと。発達障害で人様に迷惑をかける子供だと幼稚園でもさんざん迷惑をかけていた。小学生になって、もし人様に迷惑をかけたら大変なことになってしまう。しつけしきれない母親の責任だ。」と。
A君が寝ているときに、A君の首元にナイフを当ててザックリいったんです。
飛び散る血吹雪の中、お母さんは自首しに行ったそうです。
そして、そのあとの初公判を週刊誌に掲載されていました。
それを読んだときに、裁判官か検事の方が言いました。
「お母さんがA君の首元に果物ナイフ当てたとき、切って血がすごく出ているときにA君は何か言いませんでしたか?」
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喉切られるとそもそも空気が漏れちゃうから、パクパクであんまり声も出なかった思います。
お母さんは「A君は、お母さんごめんねと口がかすかに動いた」と、泣きながら言ったそうです。そして、A君はそのままこの世を去ってしまった。
お母さんは刑が決まって、刑務所に行くことになりました。
実はご主人がいたんです。
ご主人は長距離トラックの運転手だったんです。家にいないことも多く、一週間に一回くらいしか家に帰れなかったんです。
だから、お母さんが全部1人で抱えていた。
そこで、なぜこの話をしたのかというと、僕は実はその幼稚園の先生に依頼を受けてWISCを教えていたんです。WISCの検査結果の見方を教えていたんです。
その時に、幼稚園の先生からこの話を聞いて、WISCの取り方をもしお母さんが発達障害とかを知る信頼できる先生が近くにいれば、お母さんは1人で抱えて発達障害あるわが子を小学校に行かせるわけにはいかないとか、人に迷惑かけ続けるんじゃないかとか、もしかしたら信頼できる誰かに相談していれば、こんな悲しい事件は起こらなかったんじゃないかと僕は思います。
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担任の先生もすごくすごく気を付けて話したということは聞いてはいるんですが、もっと上手に伝える言い方があったかもしれないです。
先生を批判するわけでも、お母さんを批判するわけでもありません。
悪い時に悪いことが重なっちゃったんじゃないかなと思います。
だから、僕はWISCの研修であれ、発達障害の研修であれ、もし僕ができるのであればその子を救うとか、お母さんを救うとか、そんな大それたことはできないと思いますが僕が持っている発達障害の知識は一般の心理士より、多分多く持っています。
WISCの取った件数も多分、誰よりもとっていると思います。
そのため、こういった情報をもっともっといろんな方に届けられれば、救える命があるのかもしれないと思って、WISCなど様々な研修を行っているところになります。
こんな感じで発達心理サポートセンターの車として様々な研修をこれからもしていきたいと思っています。
いかがでしょうか。
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発達心理サポートセンター
心理士/カウンセラー 車重徳