皆さん、こんにちは。
発達障害ラボ室長の車重徳です。
さて、こんな質問を頂きました。
「WISC4検査における指標得点の差が大きいと、なぜ生きにくいのでしょうか」
というものです。
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WISCというのは、ウェクスラー式の知能検査です。
FSIQというのがトータルのIQです。
その子の全体のIQという形になります。
WISCでは、そのIQを構成している要素が、VCI(言語理解指標)、PRI(知覚推理指標)、WMI(ワーキングメモリー指標)、PSI(処理速度指標)と4つに分かれています。
今回の指標得点の差というのは、何なのかというとVCIとPRIの差が大きいとか、WMIとPSIの差が大きいとかの差が大きいと生きにくいと言われています。
少し勘違いしている人もいて、差が大きければ何でもかんでも生きにくいかと言われるとそういう事ではありません。
では、どういうことなのでしょうか。
例えば、FSIQが100だとします。
100は平均です。
VCI、WMI、PSI、PRIの当該年齢レベルの数値も100です。
FSIQが100の場合、構成要素であるVCI、PRIがすごく差があったとします。
VCI=150、PRI=50だったとします。
ただこの場合でも、WMI、PSIが100だったとしたら、FSIQは100近くになります。
そのため、FSIQが当該年齢レベルであったとしてもVCIとPRIの差が大きいと生きにくいよねっていう話になります。
FSIの100だけみて信用しないでほしいという事です。
では、指標得点の差がどれくらいあるとFSIQ信頼してはいけないのでしょうか。
差が23です。
23以上差があるとFSIQ信用できません。
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GAIとCPIという考え方があります。
VCIとPRIだけをまとめて学校のお勉強に必要な基礎能力という風に見ましょうとします。
WMIとPSIだけをまとめて日常生活に必要な基礎能力とみなしましょうということになりました。
ただ、この考え方は言語理解指標とワーキングメモリーの差があるとか、言語理解指標と処理速度の差があるとか、知覚推理指標とワーキングメモリーの差があるとか、知覚推理指標と処理速度の差があるとかっていう風にしか使えません。
そのため、VCIとPRIの差が大きい場合はこの考え方は使えないという事です。
こういった場合は下位検査で判断してくださいという形になります。
下位検査は何なのかというと、VCI(言語理解指標)は類似、単語、理解っていう3つの検査があります。
これを下位検査と呼びます。
PRI(知覚推理指標)だと、積み木模様、絵の概念、行列推理。
WMI(ワーキングメモリー)だと、数唱、語音整列。
PSI(処理速度)だと、符号、記号探し。
これらの検査からその子のパーソナリティ、特性を読み解いてくださいということになります。
では、差が大きいと生きにくいというのは、どういうところからきているのでしょうか。
例えば、VCIで考えると類似というのが抽象的な言語概念の理解です。
単語が単語力、語彙力です。
では、類似の数値が高いということは抽象的な言い回しであったとしても理解できています。
もやっとした言い方であっても理解できてしまいます。
でも、会話、対話とした場合は聞いたらアウトプットして返さなければいけません。
その時に、類似がある子は相手が何言っているか分かりますが、単語として返す時に単語力が低いから、その子が伝えたいことが伝えられないということがおきます。
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例えば、幼児さんだと「はさみ切れないね。」ってなったときに、「このはさみ仲良くなれないね」とか、「このはさみ元気ないね。」というような言い方をすることがあります。
言語力が足りないことによって、違った言い方をしてしまいます。
言い方変わると、伝わり方が変わります。
相手が何を言おうとしているかが分かる、自分の言いたいことも頭に浮かんでいる…でも、語彙力が足りないから伝えられない。
だから生きにくいというところにつながってきます。
ここまでの説明ができる心理士さん、いないです。
「生きにくいですね」「大変ですね」以上。
こんな人ばかりです。
臨床心理士さんとかは、大学院で習わないから知らなくて言えないんです。
なぜ生きにくいのか、それに対する対策を打ち出すところまでが心理士の仕事だと僕は思います。
そのため、発達障害ラボでは毎週研修を行っています。
いかがでしょうか。
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発達障害ラボ
室長 車重徳